熊谷正寿@m_kumagai
京都・嵐山の吉兆さんで白ワインの神様、ムルソーの魔術師と呼ばれるコシュ・デュリ( Jean Francois Coche Dury)さんとコシュ・ディリさんの奥様を囲むワイン会を開催しました。楽しかったなー。今発売しているGOETHE5月号にその時の様子が掲載されています。ご覧ください。http://on.fb.me/15uvalu
その場にいた誰もが歓喜したーー
“白ワインの神様”と出会う一夜限りの宴
卓上に並ぶ夥しい数のワイングラス。談笑する人々の横にはべる芸妓衆。
よく見れば、真ん中にいるのは白ワインの神様、コシュ・デュリでは?
いったいここで何があったのか?
飲めば幸せな顔になるワイン
偉大なワインはたびたび人を黙らせる。しかし時間の経過とともにワインの香りが開くように、心の扉も開かせ、人々を笑顔に導くのだ。
ところは京都嵐山。渡月橋近くに佇む日本料理の殿堂「京都吉兆嵐山本店」に、ワイン通として知られる名士たちが集結した。放送作家で脚本家の小山薫堂、ワインバー「TSUBAKI」を経営する椿剛、コーディネート会社「プリムス」代表取締役の森美樹などなど……。 グラスに注がれた最初のワインを口にするなり、まるで金縛りにでもあったかのように一同絶句。そのワインとは……、類い稀なるテロワールが生みし至高のシャルドネ、ムルソー2011年。造り手はブルゴーニュ白ワインの神様、ジャン・フランソワ・コシュ・デュリである。 その神様ご本人がオディール夫人とともに初来日。京都吉兆の徳岡邦夫総料理長による、究極の日本料理とともに、一夜限りの宴を楽しんだ。しかも、人生で一度でも味わうことができれば奇跡とされる特級畑もの、コルトン・シャルルマーニュ2001年を携えてのご降臨。会が進み、ワインの格が上がるにつれて、場の緊張も高まるかと思いきや、祗園の芸妓さんらが舞い終えた頃には皆、相当楽しげ。「生真面目な作り手」として評判の神様も喜色満面である。偉大なワインは人の心をひとつに結び、歓喜をもたらした。
一生に飲めるかどうかのワインと和食の最高峰が出会う
ところで、白ワインの神様、コシュ・デュリについてもう少々詳しい説明が必要だろう。本拠地は白ワインの銘醸地として名高い、ブルゴーニュのムルソー村。3つの1級畑に加え、アロース・コルトン村にも特級畑のコルトン・シャルルマーニュを所有する。それぞれの区画はとても小さく、コルトン・シャルルマーニュはたったの34アール。よい年でも1800本できるかどうかだ。 「しかも彼は大手の酒商に今でもワインの一部を桶売りしているので、実際の流通量はさらに少ない。世界中で熾烈な争奪戦が繰り広げられています」と、神様のワインを輸入する日本で数社しかない正規代理店のヴァン・パッシオン の川上大介社長。 ちなみに今回、料理との組み合わせで神様が最も気に入ったのは、お椀の鮑汐とムルソー・ジュヌヴリエールだったとか。
唯一無二の出会いを仕掛けたのはーー
さて、この夢のような宴を仕掛けたのは誰あろう、IT業界きってのワイン通として知られ、少なくとも年に5回は京都へ足を運ぶという、GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿氏である。 「去年の春のことです。かねてより計画していたブルゴーニュ訪問がようやく実現して、憧れのコシュ・デュリさんのドメーヌにもお邪魔することができました。その時にとても温かく迎えていただき、いろいろなワインを試飲させていただいたので、今度はこちらからお礼をしたいと思いましてね……」と、神様ご降臨の顛末を語る熊谷氏。 「僕はもともと、ブルゴーニュの白では酸のしっかりしたコルトン・シャルルマーニュが大好きなんです。ところが、まるでアンリ・ジャイエのように入手困難なコルトン・シャルルマーニュがあるというじゃないですか。それがムルソーの魔術師、白ワインの神様といわれるコシュ・デュリさんのワインでした。かれこれ8年ほど前、88年のコルトン・シャルルマーニュを味わう機会に恵まれましたが、普通のワインとは香りの広がりかたが全然違う。僕はブルゴーニュは赤も白も“鼻で飲むワイン”だと思っていますが、一発で打ちのめされました(笑)」 熊谷氏のぞっこんぶりも並たいていではない。仕事熱心で畑の外、ましてや海外になぞ滅多に出ない神様も、「心の友からの招待ならば」と、熊谷氏のラブコールを快く受けたのだとか。 「今回はもっとコシュ・デュリさんのファンを増やしたいと思い、私の個人的なお友達にも声を掛けさせていただきました。ワインはやはり、人と人をつなぐコミュニケーションツールだと思うんですね。コシュ・デュリさんをもてなしながら、ご同席の方々にも喜んでいただきたい。皆さんの喜ぶ笑顔が、僕にとっては仕事のモチベーションになるんです」
*ドメーヌ・コシュ・デュリ
Domaine Coche Dury
国名 FRANCE フランス
産地名 COTE DE BEAUNE コート・ド・ボーヌ
生産者所在地 MEURSAULT ムルソー
リリース毎に争奪戦が繰り返されるムルソーの魔術師、コシュ・デュリ
ノンフィルターの長熟型白ワインでブルゴーニュを代表する生産者として知られるドメーヌ、コシュ・デュリは国道74号線近く、ムルソー村中心部から少し離れと所に居を構える。1920年の設立時は町の中心部にあり、6つの畑の分益耕作からスタートした。少しづつ畑を購入し、特に1940年にドメーヌに入った2代目が所有地を拡大。現在3代目になってからも畑の購入は続けられており、最近に購入したのは1994年のピュリニー・モンラッシェ、1995年のムルソー。現在ムルソーの村名アペラシオンのリューディーは15区画を数える。分益耕作の割合は年々減少し、現在は10.5haのうち1.5haを残すのみである。ワインの元詰はドメーヌ設立時から始めているが、商習慣で今でも樽の1/3をネゴシアンに売却している。3代目の当主、ジャン・フランソワ・コシュ氏は、1964年にグランシャンにあるワイン農業高校を卒業後すぐにドメーヌに入り、10年間父親の下で働いた後、当主となった。ドメーヌ名のコシュ・デュリは氏の苗字と夫人の旧姓を結んだもの。ジャン・フランソワ氏が当主となって一新したのは機械類のみで、最低18ヶ月の長期熟成を特徴とする初代からのワイン造りを踏襲している。